その薬、本当に必要ですか?無駄な医療に対抗するChoosing Wiselyキャンペーンとは

最近メディアなどでも取り上げられるようになってきたChoosing Wisely(チュージング・ワイズリー)というキャンペーン、皆さんは何のことかご存知でしょうか。

病院に行くと何種類もの薬を処方されたり、とにかく検査をたくさん受けさせられたり、必要以上に不安な気持ちになったこと、一度くらいはあると思います。「過剰診療」や「無駄な医療」と言われるこの問題が今大きくなってきています。

念のためと言われればその気になって服用しますが、それが患者さんと医師との十分な対話を通してなされた決断と言わないケースが多く見られるのです。

そしてこの問題にメスを入れるのが、アメリカから始まったChoosing Wiselyというキャンペーン。

今回は今問題視されている過剰診療や無駄な医療から、賢く必要な治療だけを受けていくためのポイントをご紹介します。

 

1.過剰診療、無駄な医療とは

「過剰診療」や「過剰医療」、「無駄な医療」とは、一言で言うと適切な量や費用を超えている医療のことを全般に指す言葉です。つまり、治療のために必要だとされる適正な医療を超えた、行き過ぎた診療・医療ということになります。

ピンとこない方もいるかもしれないので、以下の例をみてみましょう。これは60代の女性に起こった実際のケースです。

ある日咳と発熱があったこの女性は風邪だと思い市販の風邪薬を薬局で購入し、服用しました。これで一般的な風邪の症状はよくなりました。

ところが、同時期にたまたま予約が入っていたアレルギー性鼻炎の診察の際にそのことを相談したところ、医師からは念のためということで5日分の抗生物質を処方されます。

処方通りに飲み続けていると、突然激しい下痢と発熱に襲われたため、緊急で病院に駆け込むと「偽膜性大腸炎」と診断されてしまいます。

そして原因は抗生物質の服用によって腸内細菌のバランスが崩れたことによって大腸に重い炎症が起きてしまったことでした。

結局この女性は緊急入院し、2週間も治療に費やさなければならなくなってしまいました。

 

このように、不必要な抗生物質を処方されたために予期せぬ副作用に苦しむことになったというような過剰な医療を経験した人は少なくありません。

そして今この過剰診療や無駄な医療が大きな問題になってきています。必要性が疑問視されている医療には以下のような例があります。それぞれについて詳しくみていきましょう。

 

抗生物質の処方

風邪薬として

一般的に流行る風邪やインフルエンザのほとんどがウイルス性のものです。ウイルスが原因の場合には抗生物質は効果はありません。その上、副作用のリスクがあります。

湿疹への対処として

かゆみや赤みが出る湿疹に対する処方として抗生物質は改善効果として期待できるものではありません。抗生物質が必要なのは膿や皮膚の熱感などの細菌感染症状がみられる時に限られます。

高齢者の無症候性細菌尿への対処として

高齢者の場合、感染がなくても尿から細菌が検出されることが多々あります。症状がみられない場合は抗生物質は必要ないと考えるのが通常です。逆に、排尿時に痛みや灼熱感がみられれば処方は必要となります。

 

頭痛薬の処方

頭痛がすると仕事に集中できなかったりと、すぐに頭痛薬に頼りがちになりますが、市販の痛み止めの飲みすぎは重い副作用のリスクが隠れています。これがひどくなると痛み自体にも過敏になって「薬剤乱用頭痛」を招くこともあります。

 

コレステロール低下薬

75歳以上の場合の話ではありますが、高齢者の場合には高いコレステロール値が心疾患などに直接的に関わるという根拠が現時点では明確になっていません。逆に筋力が低下してしまうなどの副作用が懸念されています。

 

関節リウマチ第一選択薬

アメリカのリウマチ学会では、少なくとも最初の3ヶ月間は生物学的製剤(化学的に合成したものではなく、生体が作る物質を応用して作られた薬物)ではなく非生物学的製剤を処方するべきだとされています。

 

睡眠薬の処方

こちらも高齢者に関してですが、睡眠薬の副作用が若い人に比べて出やすいことがリスクになります。転倒や骨折などの危険性も高めてしまうと言われています。

 

2.Choosing Wiselyキャンペーンとは

2011年から2012年にかけてアメリカで始まったキャンペーンで、本当に必要で副作用の少ない医療を実現させていこうというものです。

日本語訳としては「医療における賢い選択」となり、日本版のChoosing Wisely Japanを聞いたことがある方もいるかもしれません。日本では2016年から始動し、不要であるのに処方されている風邪薬を保険適用から外すことを検討するなど、無駄な医療への関心そのものが高まっています。

Choosing Wisely Japanのウェブサイトでは下記のような資料が用意されていて、誰でもアクセスできるので、該当するものがあった場合にその医療が本当に必要かどうか見極める手助けになっています。

  • 抗菌薬が必要なとき、必要ではないとき
  • 変形性膝関節症の治療-サプリメントは効かない
  • 鎮痛薬について-心疾患・腎疾患がある場合
  • 大腸内視鏡検査について-必要な場合と必要でない場合-
  • 子どもの視力ケア 必要なとき、必要でないとき
  • 腰痛の治療-適正な床上安静の期間とは?

Choosing Wiselyは世界的にも広がりも見せていて、2013年のG8認知症サミットでは、イギリスが、死亡の増加につながる不要な抗精神病薬の使用を低減してきたことなどが報告されています。

 

3.適正な医療を受ける方法

過剰診療や無駄な医療と言われる問題が少しわかったはいいけど、具体的にどうしたらいいの?というのが気になるところですよね。

適正な医療を受けるための心構えとして大事なことはズバリ医師と積極的に対話をするということです。

確かにお医者さんは偉いから言われた通りに薬を飲めばよくなる、と考えるのが普通ですよね。でも、実際に薬を飲んだり治療を受けるのはあなたです。

どのような副作用があり、他の治療方法ではダメなのか、など、基本的な情報は聞く権利があるのです。疑問点がある場合は納得いくまで勇気を出して医師に聞いてください。

治療や検査の中には、実際にはあまり有効でなかったり副作用などのデメリットが大きいものもあります。

不安な時は遠慮せずに受ける前に医師に確認することを心にとめておきましょう。その時には以下のような質問をすることで透明性が増して、正しい選択ができるようになります。

医師に聞くべき5つの質問

  1. 「本当にこの治療が必要なのでしょうか?」
  2. 「どんなリスクを伴うのですか?」
  3. 「もしこの治療を受けなかった場合、どうなりますか?」
  4. 「もっと副作用などが少ない方法はありますか?」
  5. 「費用はどのくらいかかりますか?」

 

4.まとめ

過剰診療や無駄な医療の問題はまだよく知られていませんが、必要以上の体への負担や、治療費の負担などに直結するので、診察を受ける際には患者側の意識を変えていく必要があります。

根拠の乏しい「念のため」や「とりあえず」という発想はやめて本当に価値のある医療を受けるために医師との対話を積極的にしていくことがこれからさらに大事になってきます。

こうした問題に取り組むChoosing Wisely(チュージング・ワイズリー)キャンペーンでは啓蒙活動の他にもウェブサイトでいろいろな情報が手に入るので、是非確かめてみてください。