高齢者の運動指導で効果をあげる5つのこと、健康運動指導士に聞きました!

高齢者に向けた運動指導を行っている、もしくは行おうと検討している方、指導をするからには効果があがるトレーニングを進めていきたいですよね。

体力や目的が様々な高齢者には、トレーニングを始めてもらうまでも、実際始まってからも効果を出すための工夫が必要です。

今回は健康運動指導士さんへのインタビューから学んだ高齢者の運動トレーニングで効果を出すためにできる5つのことをご紹介します。

事業所などで自分たちのやり方に見直せる部分がないかなど参考にしてみてください。

 

1.目標設定を明確に

高齢者向けの運動指導で大事なこととして、本人が設定する目標がまずあります。

ただ単にトレーニングを行うのではなく、何のためにそのトレーニングを行っているのかという自覚と認識を持つと持たないでは効果に差がでてくるからです。

つまり、目標が大前提としてあり、それを達成するための手段がトレーニングなのであって、トレーニングそのものが目的ではないことをしっかり理解することが必要です。

目標設定において大事なのはそれが具体的であることです。

そしてその具体性は人それぞれで基準が変わるので、その本人にとって十分に具体的であるかを考えることが大切です。

例えば、

「立ちあがりを安定させる」

という目標があったとします。

一見十分な目標に見えますがこのままではこの目標達成に向けてのトレーニングをうまく設定できません。

まず立ちあがりの状況として、杖を使った場合の立ち上がりなのか、何も使わない状態なのか、手すりにつかまった状態なのかなどをはっきりさせる必要があります。

そして、何をもって「安定した」と判断するかという評価基準も明確にしなければなりません。

ふらつきや転倒が問題の方の場合であれば、ふらつきや転倒の回数が1日5回から2~3回以下に減少する、といったような説明が必要です。

この点をふまえて改めて最初の目標を修正すると、

「杖を使った椅子からの立ち上がりの時のふらつきを現状の1日5回から2回に減らし、安定に近づける。」

といったようになります。

これであれば杖を使った立ち上がりに重要な筋力のトレーニングが設定できますし、ふらつきの回数を数えることで正しい評価が可能になります。

このように、目標はそれぞれの人にとって出来るだけ具体的に設定することはその人に最適のトレーニングで最大限の効果をあげることにつながります。

 

2.思考パターンを変えさせる

私たちは今まで生きてきた中で形成されていく行動や思考パターンを持っています。

意識的や無意識的に行っているものがありますが、いずれにせよ習慣化されたパターンなのでこうした考え方や行動が運動トレーニングにおいても影響します。

ポジティブな考え方はよりポジティブな結果を生みやすいですし、ネガティブな考え方はいくらトレーニングしても結果がついてこない場合があります

良い考え方で行動パターンを変えていくには段階があり、それぞれの段階別で取り組みが必要です。

段階①引き込み

・・・無関心である状態から体に良い運動に興味を持つ

<この段階で取り組むこと>

注意を引くための動機付けをする

例「孫の結婚式に杖なしで出席する」

例「家族との旅行についていけるようにしたい」

段階②正しい解釈

・・・今の状況が改善されるメカニズムをしっかりと理解する

<この段階で取り組むこと>

本人にわかりやすい言葉で説明し、理解してもらう。

例「ここの筋肉を鍛えると上体を支える力が増えるので腰痛予防になりますよ」

例「ストレッチは血液循環を良くするので肩こりにも効きます」

段階③バリアの減弱

・・・今の状況は変えることができるんだという意識が生まれる

<この段階で取り組むこと>

経過を細かく記録し、改善されたことをどんなに些細なことでも指摘する。

例「前よりも姿勢がうまく保てています。筋肉がついてきた証拠ですね」

段階④恩恵の強化

・・・実際のトレーニングを通して状況の改善を体験し、喜びを得る

<この段階で取り組むこと>

本人の気づきを報告してもらい記録に残したり、始めた頃の写真などと比べて改善された部分を視覚的に記憶してもらう

例「単独歩行の時間がこんなに伸びていますよ」

例「週に1回お気に入りの花屋まで歩いていけるようになりましたね」

段階⑤自信の強化

与えられるだけでなく自分1人でも行うという気持ちになる

<この段階で取り組むこと>

1人でできるいろいろな方法を紹介したり、教材や道具を紹介する

例「こうした新しい体操があります」

例「この道具は場所も取らず、ご自宅で好きな時間にできます」

このように、その人がどの段階にいるのかを見極めて適切なアドバイスで行動パターンを変えていけるようにすることが大事です。

 

3.運動だけじゃない!

運動することばかりに意識を集中させてしまうと、トレーニングのためにトレーニングを行うといったように目的と手段が混乱してしまいます。

これは歩いたり筋トレをしたりといった運動をすることが大切だ、という限定的な理解でいると陥りやすい危険です。

運動は嫌い、苦手、という人も多いので、その人たちに運動そのものをいきなり進めてしまうとかえって挫折し全くやらなくなってしまう場合もあります。

しかし、実はトレーニングって運動にこだわる必要ないんですね。

例えば家事であっても拭き掃除などは運動量が多いので体に負担となりますので、これをトレーニングとして行うことができるのです。

いつもやっている家事がトレーニングになればそこに「運動をしている」という意識が薄れ、抵抗がなくなります。

駅までの道のりを大回りしたり、エレベーターを使わなかったりするのも、運動そのものというより日常生活の範囲でできる工夫です。

映画鑑賞が好きであれば、近くの映画館より一つ遠い映画館に行ったり、読書が好きであれば隣町の書店まで足を伸ばせば良いのです。

このように趣味を使って無理なくトレーニングを取り入れ、体に適度な負担がかけられれば運動にこだわる必要はありません。

 

4.コーピングの傾向を知る

自主トレーニングの課題があると、決められた期間の中で大きな効果を発揮することができます。

ただし自主トレーニングのメニューを考える時にその人のコーピングの傾向を知っておかなくてはなりません。

コーピングとは認知行動療法で使われる言葉で、ストレスに対してその人がどのように対応するかというものです。

高齢者の運動に対する対応としては大きく3つの傾向が見られます。

①自信がないことに返答しない

自分の体力や気力に自信が持てない人は、自信のないことに対して無言になり返答を避けます。

言ってしまってもできるかわからない不安があるからです。

このような場合はある目標値に対して8割もしくは9割くらいは達成できる、といった妥協点を探し、その妥協点をしっかりと自己申告してもらいます。

②運動過剰になってしまう

真面目で頑張り屋さんはトレーニングも多く行ってしまったり、体調が悪くてもいつも通りやろうとします。

こういう人にはトレーニングの上限をしっかりと設定し、その日の体調に合わせて行うことの重要性を指導しなくてはなりません。

③口では良いが実践が伴わない

楽観的な方はその場の返答が良くても家にかえっても実施しないことがあります。

こういった人には最低限これはやってくださいね、といった具体的なプログラムを準備することが必要になります。

また、実施を確認するためのチェックシートなども家族の方に確認してもらうなどの工夫があるとなお良いです。

 

 

このように、それぞれの人のコーピングの傾向を理解して、それに合った自主トレーニングのアドバイスを出すことが効果をあげる要素の一つになります。

 

5.運動の専門家に頼る

トレーニングやリハビリの本はたくさん出ていますが、専門家の技術や知識があることに越したことはありません。

ところが現状として介護事業者からは専門家に頼みにくいという声も多いようです。

それには、専門用語がわからないといったことや運動の指導はしても内容の説明がないといったことがあるようです。

こうした問題は、依頼する際に目的や最終的に目指すものを細かく説明したり、難しい用語はその場で説明してもらったりといった工夫で乗り越えられます。

信頼関係を築くためにもコミュニケーションをしっかりととり、一体となって指導にあたってくれるような専門家に依頼することが望ましいでしょう。

健康運動指導士の方は講習会なども開催していますし、地方自治体と一緒になって活動している場合が多いのでそうしたところにまずは相談してみても良いと思います。

専門家の指導をうまく取り入れて、運動する対象者の方のモチベーションも高められると良いですね。

 

6.まとめ

高齢者向けの運動指導では、他の年齢の方への運動指導とは違った課題が多くあります。

衰えた筋力を今さら・・・という方もいるでしょうし、運動に対する意識が変わらないと進んでトレーニングをしようとはなかなか思ってもらえません。

よって、トレーニングを始められた時にいかに効果を出してやる気を継続してもらえるかは大きな鍵となります。

効果をあげるためにはトレーニングの方法やアドバイスの中身を工夫しなくてはなりません。

今回は効果をあげるためのポイントを5つご紹介しました。

これらをうまく取り入れてより適切な運動指導を行えると良いですね。